私は卒業後就職する生徒が多い高校の進路指導部で、副部長の経験があります。
そのため、立場上たくさんの企業の採用担当の方達とお話しする機会がありました。
今回はその経験を活かし、企業の高卒担当者(または人事担当者)向けに情報をまとめていきます。
地域差があるでしょうから、あくまで一例としてご活用ください。
目次
高校求人は指定校求人にするべきか?
求人票をハローワークで作られる際

と聞かれたことはありませんか?
指定校とは、文字通り(求人票を出す予定の)学校を指定する、てことです。
指定校を外しても良い場合
- 間口を広くして募集をかけたい場合
- どこでもいいから、まずは人に来て欲しい
このように考えている場合は、指定校を外します。
指定校をつけた方がいい場合
- 馴染みや付き合いがある学校に出す求人票
- 就職指導がしっかりされていて、評判がいい学校
このような学校に求人票を出す場合は、その学校で指定校をかけます。
・必ず1名はほしい、その学校で学んだ生徒なら誰でも大丈夫・・・と思うなら、指定校有り。
こんな感じで判断したら良いと思います。
指定校求人にしてメリットはあるの?
高校の現場からすると、指定校求人は

という情報をアピールされているだけです。
要は、指定校求人にしたからといってその学校から必ず受験生が送られてくるということではありません。
「それじゃ指定校求人にメリットはないの?」と不安になるかもしれませんが、そうとも言い切れません。
ご新規の会社と馴染みの会社では多少違いますけど、どちらにしても教師から生徒への伝え方に差が出る。
これこそが、メリットです。
もう少し具体的に話していきましょう。
高卒就職は、チャンスが一度なので失敗できない
コロナの影響もあったり法律が関係したりもするので今後は大きく変更があるかもしれませんけど、一般的に大学生の就職活動では
- 1人で複数社応募し
- 興味を持ってもらった(選考を通過した)企業にアタック
- 複数社から内定をもらって
- 最終的には就職活動者自身が企業を決めていく
こんな流れをとるはずです。
しかし、高校の就職活動は違います。
学校に来た求人(高校求人)で就職しようと思っている生徒に対しては、あくまで生徒の主体性を重視しながら(家庭の意向含む)、次のように進路指導をしていきます。
- 基本的に担任(または進路指導部の教師)がマンツーマンで進路指導(企業の紹介、提案等)を行う
- ミスマッチを防ぐために(主に夏休みを利用して)応募前見学(実際に働く職場を見させてもらうこと)を積極的に行う。
- 9月中旬(16日~)から始まる就職試験は、1社しか受けられない
7月中旬に実施される三者面談で、これらの内容を詰めていく学校がほとんどだと思います。
大卒と大きく違うのはココです。
ということです。
もちろん就職試験に落ちれば、一人で何社も受けることになります。
最近のトレンドとしては(生徒の不利益にならないように)11月以降に受ける採用試験に関しては、複数応募も可能としているところもあります。
高卒の就職は1社しか受けられないからこそ、失敗したくない。
失敗したくないからこそ、手堅い(受けたらほぼ落ちることはない)会社を受けたい。
担任や進路指導部としては、そんな会社を受けさせたいと考えています。

と思った、採用担当者のあなた。
ここで参考になるのが、さんざん話しているコレ。
これでその会社が手堅い(試験に通りやすい)かどうかを見極めるポイントになってきます。
指定校求人であれば、落ちにくそうという意識がはたらく
初めに断っておきます。
指定校求人だからといって、高校の教員もなんでもかんでも合格しやすそうとは考えていません。
具体的に言えば、指定校求人だったとしても
- 県内にある工業高校全てを、指定校にしている
- 隣接県の高校もふくめて、数十校に指定校をかけている
こんな場合の指定校求人は、指定校の意味合いが薄れます。
採用予定人数にもよりますが
が望ましいでしょうね。
重複しますが、指定校求人は手堅さをアピールするものです。
採用予定人数に対して配られた求人票の枚数の倍率が2倍近くなると、手堅さはありません。

要は、採用の内訳がわかるということです。
生徒が企業の選定で悩んでいる時に、これを覚えていると面談の時なんかに

と勧めやすくなります。
(高卒求人ではなく)一般的な採用試験や入試って
- 定員が決まってて
- 応募人数が分かって
- 実際に受験した人数が確定して
- 倍率がわかる
よって、合格しやすいかどうかは実際に受けてみないと判断ができません。
しかし「受けてみてようやくわかる」というのは、高校の現場では避けたがります。
その点、指定校求人なら(ある程度)学校側で予測ができるので、生徒に勧めやすくなることがあります。
指定校求人のデメリットは?

人事担当者が深く考えず、場当たり的に指定校をかけるとそもそも人が集まってきてくれません。
ただでさえ今は、売り手市場(就職希望者が選べる状況)ですからね。
ということでここからは、指定校求人をかけるときに注意すべき点やデメリットを話していきます。
バッファをしっかり取っておく
まず元も子も無いことを言いますが、指定校をつけるつけないで悩むよりもまず
準備を進めてください。
- 今年中に必ず1名採用しないと、会社が回らない。
- 大卒の内定状況が分からないと高卒に回せない。
- 7月入ってから何名取るか考える、求人票を作る準備をする。
こんなことだと、必ず後手に回ります。
仕事も同じだと思いますが、準備の善し悪しで結果が決まります。
- 7月に入ってから採用計画に着手しているようじゃ、遅いです。
- 8月中旬以降に指定校の学校へ、求人の挨拶をしているようじゃ遅すぎます。
しっかりと準備期間(バッファ)を取って、段取りよく高卒採用を検討しましょう。
- 「今年で集まるとは考えていない。」
- 「今後も引き続き求人票は出すつもりだ。(採用活動は継続して行うつもりだ。)」
こんな言葉と一緒に指定校求人をもらうことができれば、現場はその企業に対して良いイメージを抱きます。
指定校をかければ必ず人がやってくる、という訳ではない。
冒頭話しましたが、指定校求人は単なるアピールの一種です。
よって、受験生が必ずやってきてくれるほどの効力はありません。
「指定校かけたのに、人がこない。」
この状況はすごい多いです。
毎年のようにお世話になっている会社に対しても「今年は居ないです…。」とお詫びしている状況です。

はじめに送った求人票は指定校求人だったが、9月中旬~末ごろの採用状況を鑑み(応募が少ない、充足しなかった)指定校を外して再度募集をかけることも多いです。
もし給与や勤務地等の条件等が変わるのであれば、再度ハローワークにいって新しい求人票を作成しなくてはいけませんけどね。
「指定校求人で集まる生徒は、会社で一から育ててく。」という意識
指定校求人はその手堅さから、校内の順位でいうと「中または下」の生徒たちが受けることも多いです。
(指定校に限らないかもしれませんが)来た生徒は会社で育ててくという意識も必要かなと感じています。
指定校求人を出しておきながら、ぶっちゃけそうでもない生徒が来たときに

そう感じて落としてしまうと、高校の現場は

と感じてしまいます。
「指定校は誰でもいいことを表明した訳じゃ無い。」という会社の思いは、痛いほど分かります。
しかし指定校というのは信頼関係で成り立つ以上、不義理に似た行為をされるとこのように感じてしまいます。
このあたりも良くお考えになって、指定校求人にされるかどうかご判断ください。
求人情報を指定校にするべきかどうか|まとめ
繰り返しになりますが、高卒求人で指定校をかけるかどうかは
指定校求人にした方が良い
- 馴染みがある
- 今後、継続的に生徒を送ってほしいと思っている
- 評判がよい学校に対して、求人票を送る
- 指定校にしても、生徒が来るとは限らないと理解している
- どんな生徒が来ても、自社で一から育てるという覚悟がある
指定校はハズした方が良い
- 上記以外の理由
- 広くいろいろな学校から優秀な生徒を集めたい
こんなところが判断基準になると思います。
昨今の人材不足は深刻だと思います。募集をかけてもそもそも人が来ない…なんて状況も、多く見受けられます。貴社の採用活動の一助になれば幸いです。